脱・吃音への道
物心がついた頃から、私は吃音に悩み続けてきた。
進学や就職の選択にも影響し、社会人になってからも、吃音への不安は頭の片隅から離れることがありませんでした。
仕事をするうえでも、吃音はとても厄介な存在でした。
「この先もずっと、吃音と付き合っていくしかないのだろうか。」
そんな思いを抱えながら、何度も改善や克服を試みては、うまくいかずに落胆する。
いつしか私は、吃音を「一生背負っていくしかない宿命」のように考えるようになっていました。
そんな私が、あるとき本気で吃音と向き合い、克服することを決意しました。
本やインターネットから情報を集め、治療・矯正施設やボイトレ教室にも通いました。
腹式呼吸に役立つ器具や自己暗示CDなど、効果があると言われるものも試しました。
それでも、なかなか突破口は見つかりませんでした。
「何かが違う。」
それまでとは違う、そんな違和感が残りました。
そこで私は、声の仕組みそのものをゼロから学び始めました。
解剖学や音声学を学び、声がどのようにつくられているのかを知る。
そして、「声はカラダの動きそのもの」という視点から、自分が話すときのカラダの動きに目を向けるようになりました。
さらに、
「行き詰まったら原点回帰」
という言葉に心が動き、誰かに治してもらうのではなく、自分自身で声の仕組みを理解し、自分の声を変えていく方法を試行錯誤するようになりました。
私自身にとって大きな転機となったのが、吃音を「カラダに染みついた話し方のパターン」と捉えてみたことです。
「もし、これまで身につけてきた話し方のパターンを、新しいパターンに変えていくことができるなら。」
そう考えると、それまで得体の知れなかった吃音が、少し違って見えてきました。
もちろん、知識を得ただけで変わるわけではありません。
声の仕組みを理解し、声の仕組みを妨げない発声フォームを探す。
掴んだコツを意識して繰り返す。
そして、それを少しずつ自分のものにしていく。
自転車に乗る練習と同じように、最初からうまくできるわけではありません。
でも、ある瞬間に「乗れた」と感じるような、小さな変化が訪れる。
スポーツや楽器と同じように、意識して、試して、繰り返す。
そんな地道な積み重ねの中で、少しずつ自分の中に変化が生まれていきました。
そして私は、
「自分の力で、自分を変えることができる」
という経験を得ました。
これは、吃音についてだけではありません。
一度身についたものを変えるには、時間も努力も必要です。
途中で忘れてしまったり、うまくいかなくなったりすることもあります。
それでも、意識して、少しずつ変化を積み重ねていけばいい。
その経験は、今の私にとって大きな自信になっています。
もう少し早く、このことに気づいていたら。
私は、進学・就職という人生の選択が迫られる大切な時期を、吃音への不安を抱えながら過ごしました。
「どうして自分だけが、こんなことで悩まなければならないのか。」
何度そう思ったかわかりません。
もし、もう少し早く「自分にもできることがある」と知っていたら。
もし、吃音に対する見方を変えるきっかけがあったら。
違った人生を歩んでいたかもしれない。
そんな思いがあります。
だからこそ、今、吃音に悩んでいる若い世代には、吃音を理由に進学や就職、夢や目標を諦めてほしくないと思っています。
もちろん、吃音への向き合い方は人それぞれです。
どのような方法が自分に合うのかも、人によって違います。
だから、K-Climbersだけが答えだとは思っていません。
ただ、もし今、
「どうしたらいいのかわからない」
「いろいろ試したけれど、突破口が見つからない」
「このまま吃音を抱えて生きていくしかないのだろうか」
と悩んでいるのなら。
まず、自分の声とカラダについて知ることから始めてみてほしい。
そして、自分自身で変えていける可能性について、一緒に考えてみてほしい。
その道が険しい山登りのように感じることもあるでしょう。
でも、頂が見えて、ルートがわかれば、登り方は変わります。
私は、自分自身が歩いてきた道で得た経験を、今度は若い世代に渡していきたいと思っています。
Keep Climbing!
一緒に、少しずつ登っていきましょう。